来月から他部署に異動と言われた!
今の病棟、診療科が好きなのに…。受け入れられないよー!
いきなり異動と言われると、ショックですよね…。
でも、長期的に考えると、悪いことばかりではありません!
複数の診療科を持つ大規模な病院では、定期的に異動が行われます。
先輩や同期の異動を目にしていても、何となく他人事で、「今年も自分は異動じゃないでしょ~」と思ってしまいがちですが…
異動のお知らせは突然やってきます。
3~4年ごとに配置転換が行われるのが一般的とは言われていますが、
病院や施設、スタッフの状況によっては、もっと短いスパンで行われたり、或いはひとつの部署に4、5年以上長く所属していたり…実際の異動の期間は曖昧だったりします。
異動は、新しい人間関係や、業務内容の変化から、大きなストレスがもたらされるイメージが強い方も多いと思います。
実際に筆者は、内科病棟から手術室への異動を経験しましたが、
慣れるまでは精神的にも身体的にも負担が大きかったと実感しています。
しかし、ストレスを乗り越えた先に、異動によるメリットも存在したと気付くことができました。
この記事では、看護師に異動が行われる理由と併せて、異動のデメリット・メリットについて解説していきます!
看護師に院内異動が行われる理由とは?
病院や施設、管理者により異なる場合もありますが、
看護師の異動は、主に以下のような理由で行われています。
- スタッフ数・能力のバランス調整のため
- スキルアップ、キャリアアップのため
- 部署の風土、雰囲気刷新のため
順番に解説していきます。
スタッフ数・能力のバランス調整のため
部署ごとに必要なスタッフ数は、病床数・看護基準などをもとに決められています。
しかし、産休や退職、進学などで、部署を離れるスタッフが毎年数名出ます。
ひとつの部署から欠員が多く出ると、看護基準を満たす勤務を組めなくなったり、そのために残ったスタッフの休暇数が少なくなってしまうという事態が発生します。
そのため、人員的に余裕のある部署から、人員が不足している部署にスタッフを異動させる場合があるのです。
そして、スタッフの数を調整するのと同時に、各部署の能力に差が出ないように調整する必要もあります。
部署を離れたスタッフとなるべく近い年代で、同じレベルでリーダー業務や係活動が可能なスタッフを、他部署からピックアップして、欠員が出た部署に補充します。
また、欠員が出た場合に限らず、ひとつの部署に同年代のスタッフが多くいる場合や、優秀なスタッフが固まっている場合、
その年代や能力が不足している部署に振り分けるために、異動が行われることもあります。
スキルアップ、キャリアアップのため
ひとつの部署でみることのできる患者さんの疾患・治療、
習得することのできる知識・技術には、限界があります。
看護師は、どんな対象者に対しても看護を提供できるようなジェネラリストであることを求められますが、そのためには実際に様々な疾患や病態の患者さんに接して、看護を提供する経験が必要といえるでしょう。
後に異動のメリットの項でも詳しく解説しますが、
他部署への異動は、今より幅広い知識・技術を身に着け、看護師として成長する機会になり得ます。
専門・認定看護師といったスペシャリストというよりは、
異動によってジェネラリストとしての資質を磨き、管理者コースへの道を開くことができるでしょう。
また、スキルアップ・キャリアアップを理由に異動となった背景には、管理者から信頼・期待されており、
- 「あなたがこの部署で身に着けた看護力を、次の部署でも発揮してほしい」
- 「あなたの指導力で、異動先のスタッフの能力の底上げを図ってほしい」
- 「異動を通して、いずれは管理者を目指せるような力をつけてほしい」
といったメッセージが込められている場合もありますよ。
こういったポジティブな理由での異動なら、次の部署でも頑張れますよね!
部署の風土・雰囲気刷新のため
ひとつの部署において、中堅やそれ以上のメンバーの入れ替わりがなく、一緒に働いている期間が長くなってくると、
影響力の強いメンバー(所謂お局さんなど)によって職場の雰囲気が左右されがちになったり、
その部署だけに存在するローカルルールが生まれてきたりと、悪い風土が生まれがちです。
また、女性率が圧倒的に高い看護の現場において、人間関係の問題が発生することはしばしばあります…。
これらの「よくない雰囲気」を、新しいスタッフを投入、または影響力が強すぎたスタッフを入れ替えることによって刷新する意図でも、異動が行われることがあります。
新メンバーを迎えることによって、今までなぁなぁでやり過ごしていた業務を見直したり、いい意味で「ピリッとした空気」の中で仕事ができたりするようになるきっかけができることもありますよ。
異動を検討されないスタッフもいる?
上述した理由のために、大きな組織で働く看護師には、どうしても異動が必要な現実があります。
予期していないタイミング、希望していない部署先への異動も、命じられれば避けられないため、
規模の大きい病院に就職した場合には、覚悟をしておく必要があります…。
しかし、認定看護師や専門看護師など、特定の分野に特化した知識や技術、資格を持っているスタッフであれば、その分野と全く関係のない部署に異動させられる可能性は低いと言えます。
ある特定の診療科や分野に、興味ややりがいを見出している方は、
それに関連する研修に参加したり、資格を取得したりして、
管理者に「この部署のスペシャリストを目指したい!」という姿勢を見せることで、希望しない異動の抑止になるかもしれません。
異動のデメリット
異動にはデメリットも存在します。
筆者は、看護師4年目で、内科病棟からオペ室への異動を経験しました。
冒頭、 ストレスを乗り越えた先に異動によるメリットの存在に気付いたとお話しましたが、
私も異動当初ストレスフルの時には、「なんで異動なんてさせるの⁉辛いことしかない‼」と、デメリットばかりを見てしまっていました。
現在は、メリットの方が大きかったと感じられていると前置きした上で、
私が実際に感じた異動のデメリットについても、包み隠さずにお話ししていこうと思います。
希望の異動先ではなく、モチベーションが下がる
病院・施設によって異なりますが、一部署での勤続年数が一定期間を過ぎると、異動希望をとられることがあります。
自分の今後のキャリア形成や、携わってみたい診療科を考え、異動したい理由とともに希望を提出しますが、
希望していない部署に何の前触れもなく異動させられてしまうことも、往々にしてあります。
自分が全く予測していなかった、あまり興味のない診療科や部署に異動させられてしまったとなると、看護や仕事自体に対し熱意が持てず、モチベーションが下がってしまう場合もあるでしょう。
一時的に、自己肯定感が低下する
- メンバーとして業務をバリバリ捌いていた
- リーダーとして頼られていた
- その部署で看れる患者さんの疾患や治療について知識を深め、ケアや支援に手応えを感じていた
など、異動前の部署の仕事にやりがいを見出し、自己実現ができていた方にとっては、
異動後には、別のスタッフから業務に関して指導・注意される場面があったり、新たな診療科で分からないことが増えたりすることによって、一時的に自己肯定感が低下することにもなり得ます。
病棟から中央診療部門に異動した場合など、これまでの部署とは全く業務内容が異なる時には、「また新人に戻ってしまった」ような気持ちになることも。
でも、これは一時的です!
異動した経験は後から絶対自分の強みになります、大丈夫!!
また一から新しく人間関係を築かなければならない
人間関係の問題は、大きなストレスになります。
- 仲のいい同僚がいる
- 苦手な先輩がいても対処法がわかる
- 心配な後輩のフォローの仕方がわかる
- 自分のポジションが確立している
など、同じ職場のスタッフと自分の居心地のいい関係性を築くことができるようになるまでは、時間を要することもありますよね。
異動に伴い人間関係がリセットされてしまうと、始めは気疲れするかもしれません…。
環境の変化によってストレスが大きい
まずは異動のデメリットについてお話してきました。
毎日やる仕事、その環境が変わるのですから、ストレスが大きくて当然です…。
上述したような理由で精神的な負担が大きいことに加え、
遅出や夜勤の有無などにより生活リズムが変わることで、身体的な負担が生じることもある異動。
慣れるまでは無理せず、自分に合ったストレス発散方法を見つけて、勤務時間外は仕事のことを考えないようにできるといいかもしれませんね。
異動のメリット
ここからは、メリットについてお話していきます。
異動は、看護師として、社会人として、大きく成長する機会になりますよ!
得られる知識、技術の幅が広がる
看護師として、わかること、できることが増えます!
例えばこれまで内科にいたナースは、内服薬や抗がん剤治療に詳しかったり、
慢性的な経過をたどる病気を持つ患者さんに対して、セルフケアを促したり、精神的なケアを行ったりするのが得意です。
外科にいたナースは、術前後の患者さんのケアや包交介助、検査やオペ出しで忙しい業務をてきぱきこなすことや、急変対応に強いと思います。
でも、内科ナースが得意なことを外科ナースは苦手だったり、外科ナースが得意なことを内科ナースは苦手だったりしますよね。
外科・内科に限らず、オペナースは病棟のことをよく知らなかったり、ICUナースは外来のことをよく知らなかったり、それぞれその逆も然りです。
異動の理由の項でもお話しましたが、ひとつの部署でみることのできる患者さんの疾患・治療や、習得することのできる知識・技術には、限界があります。
しかし1回異動すれば2部署分、2回異動すれば3部署分の知識や技術が、自分のものとして身に着くのです。
内科から外科に異動したナースが、どちらの強みも身に着けたと考えると…それはとっても頼もしいナースだと思いませんか?
異動前部署で培った強みは、異動先部署に還元♪
自分の弱みだった部分は、もしかしたら異動先部署で強みになるまで鍛えることができるかも!?
人脈が広がる
院内のあちこちに、人脈が広がっていきます!
総合病院では、研修や委員会、プロジェクトなど、部署の枠を超えた活動も多くあります。
その際見知った顔がいると、相談しやすかったり協力してもらいやすかったり、何かと心強いです。
異動で複数部署のスタッフと関わる機会があると、そういった人脈を作りやすくなります。
認定看護師や専門看護師など、特定の分野の看護のスペシャリストとの関わりがあれば、
その分野で困った時や分からないことがある時に、コンサルテーションをお願いしやすくなる場合もあるでしょう。
また、看護師だけにとどまらず、医師・薬剤師・リハビリなど、多職種にも人脈は広がっていきますよ!
自分を客観視できるようになる
今まで気付かなかった自分の傾向や、短所に気付くきっかけになります!
長く働いて慣れ親しんだ部署では、自分の業務の進め方や患者さんへのケア、スタッフとの関わりはパターン化されて、それらを見直したりする機会はあまりありませんよね。
実は知らず知らずのうちに、対応に丁寧さが欠けていたり、後輩に高圧的になっていたりしていたかも…?
私は内科病棟勤務時代、自分では業務をこなすのが早いと思っていました。
しかし、異動して他部署に出てみると、自分なんて井の中の蛙だということに気付きます。
加えて、お局ナースが私のような異動者や新人ナースにキツく当たっているのを見ると、こんな風になりたくないと思うと同時に、
自分も病棟でスタッフにイライラをぶつけていたことがあったかもしれない…と反省もしました。
自分はあのまま病棟にいたら、怖い先輩になっていたかもしれません…
それに気付き、今後は絶対に誰かを困らせるような対応はしないぞ!と心に決めています
異動が辛くしんどいものだと、実際に異動を経験したからこそ知ることができたので、
自分は異動者を助けてあげられるような行動をしたいと今は思えています。
このように、異動することによって、自分の凝り固まっていた常識や悪習慣を客観視し、改善することができると、看護師として・人としてまたひとつ成長できると思います。
適応能力、柔軟性が向上する
異動という困難を乗り越えると、新しい環境に適応する力、様々な状況に対応できる柔軟性がどんどん身に着いていきます!
同時に、新しい部署でまた働くことができている、やりがいを持つことができているという成功体験は、大きな自信になります。
総合病院で働いていくなら、数年単位での異動は何度も経験する可能性があります。
産休・育休から復帰する際には、元の部署に配属されないことも多くあります。
同じ病院に限らずとも、看護師資格を持っていれば他病院や施設、もっと幅広いフィールドで働くことも可能です。
このように、看護師にとって異動・転職での環境変化はつきものです。
また違う困難が現れた時や、数年後に再び異動になった時にも、きっと異動を乗り越えて培った自信や適応能力が役に立ってくれるはずです。
とはいえ、無理は禁物
先述したように、異動には大きなストレスが伴います。
「希望していない部署に異動させられてから、ずっと辛い」
「どうしても、今の部署での仕事を楽しいと思えない」
こんな風に思う時には、決して無理をしてはいけません。
看護師の職場は、病棟や外来、手術室にICUなど、業務内容や雰囲気がそれぞれ異なります。そこで一緒に働くスタッフたちもまた様々です。
自分に合う環境、合わない環境があって当然です。
「適応できない自分が情けない」なんて、思う必要はありませんよ!
管理者や産業保健師に相談できそうなら、話してみるのも手です。
「眠れなくなった」「ご飯が食べられなくなった」など辛い状況になってしまっているなら、まず休んでみること、話の分かる人に聞いてもらうことを検討しましょう。
あなたの心身がいちばん大切です!
まとめ
異動の理由、メリット・デメリットについてお話してきましたが、いかがでしたか?
この記事を読んで、憂鬱な異動に対して少しでも前向きになれたり、無理せずまた違う選択肢を考えるきっかけになったりしたら、嬉しいです!
それでは、ここまで読んでくださってありがとうございました🥰