今日も外回りの先輩に、清潔に気を付けて‼って怒られちゃった…
清潔野の確保はオペ室看護師の基本ですが、身に着くまでが難しいですよね💦
手術室初心者がまずぶつかる壁…「清潔野の確保」。
この記事では手術室に初めて配属された方、手術室で働くことに興味がある方に向けて、清潔野について解説していきます。
手術は「無菌」で行われている
どんな手術にも全て、「感染」という非常に恐ろしいリスクが付きまといます。
体表面の傷でさえ、不潔にしていて赤くなったり、膿んだりすると回復が遅くなりますよね。
手術では、いつもは閉じられている体腔内、関節内などを開けて傷を加えるわけですから、
そこに本来はいるはずのない微生物や病原体が入り込んで増殖すると命に関わります。
感染のリスクが非常に高い手術において無菌操作は、基本中の基本であり、必須の手技なのです。
しかし初めて手術室に来て、外回り看護師から「これ滅菌物!」「そこ清潔野!」等と言われても、そもそも無菌、滅菌、清潔野とは何?と思ってしまいますよね。
まずはそこについて説明していきたいと思います。
滅菌、無菌とは何か?
滅菌とは増殖性を持つあらゆる微生物(主に最近類)を、完全に殺滅又は除去する状態を実現するための作用・操作をいいます。
「微生物の生存する確率が100万分の1以下になること」が滅菌と定義されており、滅菌されたものを「無菌状態」であるといいます。
つまりは全ての菌が存在しない状態というわけです。
手術の前には患者さんの皮膚をイソジンやヒビテンで消毒しますが、皮膚や粘膜など、生体を無菌状態にすることは現実的には不可能であるため、「滅菌」「無菌」は器具などに対して用いられる言葉です。
手術に用いられるドレープや器械、デバイス類は、それぞれの素材に合わせた方法で滅菌され、一つずつ袋やビニールに包まれています。
この中は完全に「無菌」で、手術室では「滅菌物」と称されることが多いです。
滅菌物を清潔に保つためには、他の汚染されたものに少しも触れないようにする必要があります。
直介ナースが滅菌物を受け取る際には、
外回りに袋を剥いてもらい、直介ナースは滅菌手袋を着けたうえで、
中身が外側の袋に触れないよう気を付けながら、袋から取り出さなければなりません。
清潔野とは何か?
オペ室における清潔野とは、清潔になった看護師・医師だけが触れられる領域のことです。
- 患者さんの手術部位を消毒したのち、滅菌されたドレープをかけた手術野
- 衛生的手洗いをし滅菌ガウン・手袋を装着した医師・看護師
- 滅菌されたシーツをかけた器台の上
これらは清潔野であり、これ以外のものは全て不潔野にあるものとされます。清潔野は清潔野同士としか触れ合うことができません。
清潔野のメンバー
診療科医師、直介ナースは「清潔」になる
一つの手術が行われる際、チームには診療科医師・麻酔科医師・直介ナース・外回りナース、その他臨床工学技士やインプラント業者などが含まれます。
チームのうち手術野(=清潔野)に立つのは上の写真ようなマスク・ガウン・手袋を着けている、「清潔」になった診療科医師と直介ナースだけです。
先の見出しで記載したように、衛生的手洗いをして滅菌ガウン・手袋を装着したメンバーたちですね。
このように清潔な状態になることを「手洗いしてくる」、
逆に清潔野から不潔野へ戻る時のことを「手を下す」なんて表現したりします。
「○○先生、△△先生が手を下すから代わりに手洗ってきてください!」とかですね。
首以上、背中、腰以下は不潔!
手を洗って清潔になったメンバーでも、全身すべてが清潔になったわけではありません。
ガウンから出ている首から上、膝以下はもちろん不潔です。
直介として立っていて術中に頭が痒くなっても、自分で掻くことはできません。我慢です…。
マスクなどやキャップなども、ずれたり髪の毛が出たりしないように、しっかりと装着しておく必要があります。
それだけではなく、ガウンを着せてもらう時に触られた背中の紐や、器台より下になる腰以下も不潔ですね。
術中は気を付けの姿勢はとれませんし、頭の上に手を持って行って伸びをすることもできません。
一番清潔に保っていなければならないのは、患者さんの体内に入る器械や針、糸を触る手です。
清潔なのは自分の前腕と胸だけだと思って、他の不潔な部位には手を近付けないように意識して清潔野を守ると安全です。
直介ナースの役割
直介ナースは器械出しナースとも言われる通り、医師に必要な器械を渡すのが主な仕事です。
しかし、清潔野を守るためにリーダーシップをとるのも、直介ナースの大変重要な役割なのです。
器械、器台を清潔に保つ
手術に使う器械、それを置いておく器台、メーヨは直介ナースの管轄下です。
器械は、誤って床に落としてしまったり、医師の背中や頭部に触れてしまったりして、
不潔野に触れ無菌状態でなくなってしまうと、手術には使用できなくなります。
もう一度滅菌しなければならないのですが、洗浄・滅菌には時間がかかります。
その器械が1点物で、手術に必要不可欠なものだった場合、滅菌が仕上がるまで手術を止めてしまうことになるのです。
そんな器械たちを管轄下で預かっている直介ナース…責任重大ですよね
また、器台が不潔になってしまえば、そこに置いてある器械も次々と不潔になっていってしまいます。
器台を移動させる際に壁や人にぶつからないように声を出して動く、
ドレーピング前の患者・手術台に器台を近付けすぎない、
という風に、すぐそばにある不潔から器台を守らなければなりません。
清潔野を確保する
器台や器械と同じように、患者さんに手術が行われている清潔野の清潔も守らなければなりません。
シーツが落ちかかって患者さんの体や不潔野のシーツが露出している場合には、外回りから新たに清潔なシーツを出してかけ直したり、
電気メスのコードが先生の背中に触れそうな位置にあるなら移動させたりします。
メンバーへの注意喚起
清潔野のすべてに目を光らせられるのは、直介ナースだけといっても過言ではありません。
外回りナースは実際に清潔野に触れることはできませんし、診療科医師は手術の手技が第一優先です。
清潔を守ることにおいて、直介ナースが一番リーダーシップをとらなければなりません。
先に述べたような器械・清潔野の確保に関して、協力してもらえるように、手術室内のメンバーとコミュニケーションをとっていきます。
初心者だからといって臆さずに、医師にも外回りナースにも声をかけていきましょう!
患者さんの清潔、安全を守るためには直介ナースの行動が重要です。
清潔野を守る=患者さんの安全を守ること
滅菌物や清潔野は清潔として守られることが前提ではありますが、どうしてもミスはありますし、事故が起こってしまうこともあります。
ちょっと不潔野に触れちゃったけど、これくらいなら大丈夫かな?
外回りの先輩にも、先生にも見られてないし、黙っていようかな?
初心者の頃は咄嗟の判断も難しく、不潔にしたことを医師や外回りナースに怒られるのではないか…と思ってしまい、このような思考になってしまうこともあるかもしれません。
しかし、全ては、患者さんの感染を防ぐため、術後の良好な経過のために行われていることです。
黙っているより、すぐに報告してメンバーと一緒に対応を考えるのが正解です。
むしろ、ちゃんと正直に言えた方が出来る直介ナースです!
清潔野確保への意識、まとめ
私は直介ナースとしてオペに着き始めたころは、外回りの先輩から「手が下がってるよ!」「そこ不潔だから近付きすぎないで!」と注意されてばかりでした。
手術室に行ったばかりの頃は、清潔野を完璧に確保するのはとても難しいです。
病棟ではオペ室レベルで意識して清潔野を確保することはありませんし、習慣として身に着いていませんもんね。
だからこそ外回りやフォローの先輩に注意してもらいながら、自分の傾向に気付いたり、「うっかり不潔」を防いだりする必要があります。
どこは触っていいんだろう、今不潔になってしまったんじゃないか、大丈夫かな?など考えすぎて、夢の中でも「今そこ不潔になったよ‼」と怒られたりしていました…笑
始めは難しくても、直介ナースとして1か月も経験すれば、清潔野確保は必ず行動レベルで身に着いてきます。
今は慣れずにストレスや不安を抱えている方も、大丈夫です!1日1日のオペでしっかり意識して、患者さんの安全を守れるようにしていきましょう!
直介ナースの業務内容に関しては、こちらの記事でも詳しくご紹介していますので、あわせてご覧ください。
それでは、ここまで読んでくださってありがとうございました🥰