外回りナースってどんなお仕事?オペ1件における外回り業務の流れについて解説します

オペナース

直介ナースの業務内容についてはよくわかったよ!
でも、外回りナースって何してるのか全然想像つかないなあ…

ドラマでも、外回りナースにはあまり脚光が当たらないですもんね~。
でも、患者さんの安全や手術の円滑な進行のために、とっても重要な役割を担っているんですよ!

直介ナースの業務内容についてご紹介した前回記事は、こちらです。

オペ室における「外回りナース」と聞いて、その働きや役割について全くピンと来ない方もいるかもしれませんね。
直介ナースが手を洗って清潔になり医師とともに術野に立つのに対し、
外回りナースは術野には立たず、文字通り外回りの業務を行います。

一般的には直介業務に慣れた後、外回り業務が始まる病院が多いです。
外回りと一口で言っても、その業務内容は多岐にわたります。
主には不潔野で患者さんの代弁者となって体位や皮膚、バイタルに注目しケアを行っています。もちろん、術野のことにも気を配っていかなければなりませんよ。

この記事では、外回りナースがオペ1件につく際、具体的にどのような働きをしているのか、患者さんのオペ室入室前・後から、退室するまでの流れに沿って解説していきます!

担当患者さんの情報収集

外回りナースは、患者さん入院後、術前日、または当日から情報収集を行います。
今回手術の対象となる疾患の現病歴や自覚症状だけでなく、既往歴、過去の手術歴、現在のADLの状態などについて、カルテから情報を得たり、実際に術前訪問として患者さんにお会いしたりして、全体像を捉えます。

糖尿病や高血圧症、不整脈などの基礎疾患がある患者さんは、術中のモニタリングに注意が必要です。
これまでに開腹手術歴がある患者さんは、腹腔内の癒着、剥離困難が予測されます。
このように、カルテを見るだけでも、手術中に注意すべき点がたくさん分かってきます。

カルテから基本的な情報を得た上で、術前訪問では実際に患者さんと面談を行います。
当日の手術室入室からの流れや、術中のリスクについて説明したり、
入室後配慮してほしいことや、心配事がないかについてお聞きします。

予定時間の長いオペや特殊体位でのオペでは、皮膚トラブル発生のリスクが高くなります
患者さんの皮膚状態に乾燥や菲薄化がないか、腰背部の骨突出が著明ではないかなどについて、術前訪問で実際に観察します。
体位によっては神経障害を生じやすいものも。事前に患者さんの関節可動域を確認しておくことも重要です。
こうして得た情報をもとに、術中に皮膚トラブル・神経障害予防や、患者さんの安心のためにどんなケアを行うか計画を立てていきます。

個別性を反映しにくいといわれがちなオペ室での看護ですが、患者さんによって必要としている対応やケアは様々。
術前の短い時間で患者さんのニーズを捉えて細かな計画を立てていかなければなりません。手術室看護師としての腕の見せ所です!

患者さんの安心のためにも、術前訪問でお会いしておいて、
手術当日担当する看護師として顔を覚えてもらえているといいですよね!

術前(患者さん入室前~麻酔導入)

患者さん入室前

入室前、直介ナースが術野(清潔野)の器械や物品を準備しているのに対し、
外回りナースは患者さんの寝る手術台や体位どりの準備、病棟からの申し送り表のチェックをしています。

術式によって体位は異なります。仰臥位、砕石位、側臥位、腹臥位…他にも特殊な体位が様々あり、それによって手術台のセッティング、体位どりに使用する道具類が違ってきます。
加えて、事前に情報収集し、患者さんの体形や皮膚状態によって個別のケアが必要だと判断した場合には、追加の物品やドレッシング材も準備しておきます。

また、手術当日になって患者さんが発熱していないかや、血液データに異常値がないか、カルテを参照します。
炎症値や凝固値の異常の程度によっては、当日手術が決行できないことも。執刀医や麻酔科医がチェックしていますが、外回りナースも確認しておくようにします。

患者さんを迎えられる室内準備が整ったら、その日一緒に手術につく直介ナースとブリーフィングをします。
事前に情報収集したこと、麻酔導入前や覚醒後に配慮する点について共有し、外回りナースと直介ナースが協力して患者さんの安全を守れるようにしていきます。
また、外回りナースは、麻酔科医師とも事前打ち合わせを行います。既往歴や挿管時に注意したい点について、情報共有を行います。

直介ナースは診療科医師と、外回りナースは麻酔科医師と、それぞれ関わる時間が長いですよ。

患者さん入室時・入室後

ここでは直介ナースと協力して患者さん対応を行っています。
直介ナース業務内容記事の、上記項目をご覧ください。

麻酔導入後

患者さんから呼名反応や睫毛反射がなくなると、麻酔科医師により筋弛緩薬が投与されます。
ここから、外回りナースは大忙しです。

気管挿管介助

全身麻酔の術中、患者さんには人工呼吸器が装着されます。
患者さんがしっかり鎮静されていること、筋弛緩薬が効いていることが確認されると、麻酔科医師により患者さんに気管チューブが挿管されます。
外回りナースは、患者さんが寝ている手術台の右側に立ち、麻酔科医師の介助を行います。

挿管に使用する気管チューブや喉頭鏡、シリンジなどの物品は、患者さん入室前に準備しておきます。
手順は以下の通りです。

  1. 麻酔科医師が、患者さんの頸部を後屈させ、スニッフィングポジションをとる。
  2. ポジションがとれたら、医師の左手に、喉頭鏡のブレード先端を挿入方向に向けて渡す。患者さんの右の口角を軽く引き、口腔内が見えやすいようにする。
  3. 医師は声門を目視できたら、喉頭鏡を左手で把持し、右手を出してくるので、視野を妨げないようにして気管チューブを渡す。
  4. 気管チューブが声門に入ると、医師から指示があるので、チューブ自体が抜けないように気を付けながら、スタイレットを抜く。
  5. シリンジで、カフに空気を入れ、気管内にチューブを固定する。
  6. 気管チューブと人工呼吸器を接続する。
  7. 気管チューブをテープで固定する。

挿管手技中、医師は患者さんの声門から目を離すことができないため、喉頭鏡・チューブを渡す時には、「渡します」「はい!」など声をかけながら、医師が出してきた手に持ちやすいようにして渡すことを意識します。

挿管に時間がかかったり、挿管後に事故抜去してしまうと危険なので、麻酔科医師と外回りナースとで息を合わせて手技を行う必要があります。

意識して声を出して、医師に今から何をするかや、指示されたことがちゃんと伝わっていますよ、と意思表示をするようにしています!

ルート類挿入

最初の麻酔導入で使用した末梢点滴ルート以外にも、術中に必要なルート類が色々あります。
上述した挿管介助と順番が前後するものもありますが、これらのルート類の挿入・介助を行っていきます。

  • 末梢ルート2本目
  • 膀胱留置カテーテル
  • Aライン
  • NGチューブ
  • CVカテーテル
  • スワンガンツカテーテル

術式や患者さんの状態によって、挿入する/しないルートは異なるため、診療科医師、麻酔科医師の指示を確認しておきます。

体位どり

麻酔科医師が必要なルート類を挿入し終わったら、いよいよ体位をとっていきます。
診療科医師やお手伝いのナースに手を貸してもらいながら、患者さんの身体を抱えたり、必要な道具を手術台に取り付けたりします。

麻酔によって眠ってしまい、自ら痛みや違和感を訴えることができない患者さんの「代弁者」となるのが、外回りナースです。
体位によっては、一点に圧がかかりやすくなったり、腕や足が無理な角度で固定されてしまいやすいものもあります。
この部位を圧迫したらこんな神経障害が起こりやすい、この関節の可動域はどれくらいで、何度以内で固定するのが望ましい、などといった解剖学的なエビデンスに基づくことはもちろん、

  • 「ここにこんな風に器具が当たったら患者さんは痛いだろう、ちょっとずらそう」
  • 「こんなに腕を伸ばして固定したら術後起きた時に痺れているかも。もう少し角度を緩めた方がいいな」
  • 「シーツがこんなによれていたら、きっと背中が不快だな。先生たちにも協力してもらって、シーツのしわをのばそう」

といった風に、患者さんの立場に立ち痛みや不快感を想像して、それらを一つ一つ解消していけるように関わることが重要です。

体位どりの際には複数人で患者さんの身体を抱え動かすため、ルート類の事故抜去にも注意が必要ですよ!

外回り業務入りたてのうちは、仰臥位の術式から担当します。
続いて砕石位、側臥位といった風に、段々難易度がアップしていきますよ。
先輩ナースに、この体位の時はこの道具を使用する、こういう点に注意する、といった風に、指導やアドバイスを頂きながら、外回りの経験を積んでいきます

体位をとり終わったら、
麻酔科医師には、体位どり中に挿管チューブのずれや抜けが生じていないか、心電図モニターやAライン波形のモニタリングがしっかりできているか、
診療科医師には、患者さんの腕や足の位置によって術操作に支障がないか、術野の展開ができるか、
などについて、確認をしてもらいます。

それぞれOKが出て、体位どりが最終的に終了したら、診療科医師は手洗いへ行きます。
医師がガウンを着て部屋に戻ってくるまでに、外回りナースは患者さん周りを最終チェック!
電気メスの対極板を貼ったり、術中に心電図モニターのパッチがとれてしまわないように上からテープで固定したり、手術する部位以外には消毒除けを敷いたり…。
リネンがかかって手術が始まってしまった後には、不潔野にいる外回りナースは術野には近付きづらいので、ここでやるべきことに漏れがないように目を配らせます。

術中

術野セッティングの介助

手洗いをしてガウンを着た診療科医師が戻ってきたら、消毒、ドレーピングが始まります。
清潔野では、直介ナースが消毒やリネンを渡したり、電気メスやカメラ類などのコード類を渡したりしていきます。

カメラコードの先、電気メスコードの先は清潔野にありますが、本体に指す「しっぽ」は不潔野に下さなければなりません。
外回りナースは不潔野で、カメラ本体や電気メス本体を術野に寄せつつ、しっぽを受け取り接続を行います。
同じ電気メスコード1本でも、先端は清潔、医師の背になるポイントからしっぽまでは不潔…と、扱いを分けなければなりません。
自分は不潔野にいるから、どこまでなら触って大丈夫なのか、常に考えながらセッティングをします。

すべてのコードが本体に繋がりセッティングが終了すると、執刀開始です。
術野に不足している物品がないか、患者さんのバイタルに変化がないかに気を配りつつ、ルート類挿入時や体位どり時に散らかしていた物品を片付け、室内を整えます。

直介ナースは器械出しが始まり、ここからが勝負!ですが、
患者さんが眠ってからずっと大忙しだった外回りナースは、ここで一旦、一息つけます。
まずは手術が無事に始まって一安心です…!

記録

術野や患者さんの状態が落ち着いていれば、記録を進めていきます。

  • 診断名、術式名
  • 挿入ルート類の挿入部位、輸液の種類
  • 麻酔方法
  • 体位、体位どりに使用した固定具
  • 創の位置
  • 出血量
  • 尿量
  • ドレーン挿入部位
  • 入室後の患者さんの様子、対応
  • 皮膚トラブル予防、神経障害予防のためにどんなケアを行ったか
  • 術後に皮膚トラブルが生じていた場合、その部位と状態

フォーマットや必須記録事項は施設や病院によって異なりますが、主には以上のような項目です。
執刀開始直後ではまだ埋まらない項目もあるので、術中や退室前に、術野や患者さんのことなど他の業務が落ち着いているタイミングを見て記録をします。

外回りナースが書く記録を見るのは、病棟ナースです。
記録をする際には、「病棟ナースが欲しい情報は何か?」という視点を意識するとよいでしょう。

また、万が一医療事故が起きた際などには、記録が参照される場合もあります。
確認すべきことを確認したこと、やるべきことをやったことを、確実に記録しておくことが、患者さんのためにもスタッフのためにも大切です。

患者状態の把握 麻酔科医師との連携

術中は、麻酔科医師が患者さんの循環・呼吸管理を行っています。
外回りナースもモニターを注視、必要に応じて麻酔科医師に指示を仰ぎます

術野の出血量をチェックするのは、外回りナースの役割です。
ガーゼで吸った出血、吸引量、洗浄に使用した水の量などを計算し、麻酔科医師に報告します。
出血量や血ガス値によっては、急遽輸血が必要となる場合もあります。輸血製剤は種類に合わせ適切な方法で解凍したり温めたりして投与しなければなりません。そのための道具も、外回りナースが準備します。

また、患者さんの体温管理は、麻酔科医師と外回りナースが協力して行います。
麻酔・麻薬の影響や、術野からの熱放散で、全身麻酔中の患者さんの体温は下がりやすくなってしまいます。肌の露出を最小限にしたり、掛布型の加温装置を使用したりして、低体温予防に努めます。
逆に、体温が上がりすぎるのも良くありません。
開創の大きさや、患者さんの体格を考えて、予測的に対応していきます。

直介ナースには「先読み力」が必要だと言いましたが、
外回りナースにも要りますね!

その他、部屋にはない薬が急遽必要になった時などには、受付までダッシュすることもありますよ!

閉創

前回記事の閉創の項目で、直介ナースが行うガーゼカウントについて解説しています。
直介ナースが清潔野のガーゼを数えるので、外回りナースは不潔野に下りているガーゼを数え、ガーゼが体内に入り込んだままになっていないか、確認をします。

閉創のタイミングになってくると、外回りナースも忙しくなってきます。
もう出番が終わったカメラなどデバイス類の本体の電源を切っていったり、創に貼るドレッシング材を直介ナースに清潔操作で渡したりして、手術が終了しリネンを剥ぐまでの準備を行っていきます。

術後

手術が終了しリネンを剥いだら、患者さんの体位を仰臥位へ戻し、抜管・退室への準備をします。
こちらも直介ナース業務内容の記事、以下の項で詳しくご紹介していますので、ご参照ください。

記録 申し送り

術中から進めていた記録を、退室までに完成させます。
執刀医に、最終の術式名や診断名を確認したり、
麻酔科医に、術中に投与した輸液や麻薬の量、解熱鎮痛剤を最後に使用した時間などを確認し、入力します。

直介ナースと医師たちが患者さんを病棟のベッドに移乗させている間、
外回りナースは病棟ナースに申し送りを行います。

手短に送る時間しかないため、記録した情報の中でも、特に注意してほしい点、病棟でも観察を継続してほしい点などに的を絞ります。

申し送りが終わり、患者さんをお見送りしたのち、直介ナースとデブリーフィングを行います。
これにて、オペ1件における外回りナースのお仕事は終了です。お疲れさまでした!

まとめ

オペ前中後で、外回りナースがどんな風に働いているか、知っていただけましたか?
患者さんの循環・呼吸に注目する必要があり、薬剤やその薬効についても知識が必要なため、直介ナースよりも難易度は高いと言えるかもしれません。

場合によっては、術後訪問に病室へ伺うこともあります。
覚醒直後は、まだ麻酔が覚め切らず、会話が難しい患者さんも多いですが、
後日病室でお会いして、術前どおりの元気なお顔が見られた時に、「ああ無事でよかった!」とやりがいを感じられますよ!

この記事を読んで、外回りナースの仕事に少しでも興味を持っていただけたら嬉しいです。
それでは、ここまで読んでくださってありがとうございました😌✨

タイトルとURLをコピーしました